「……う……ん…………」
「……気が付いたようだね」
「ルー、バ…………?」
ルーバはコクリとうなずきました。
「ここは?」
「アタシの星船さ。びっくりしたよ。何かが流れ着いたと思ったら、ねがいぼしくんだったなんてね。話はチコ様から聞いたよ。まさかあのお方が連れ去られてしまうとは……」
「……ロゼッタ!! ……チコ!!」
ジーノは、天文台で起こったことを思い出し、飛び起きました。
「ぐっ……!」
カラダのあちこちに痛みが走ります。
「ジーノ、だめだ! そのケガじゃ……」
「ベビィ……! 無事でよかった……」
ベビィがジーノに寄り添います。
「ジーノがとっさにボクを帽子の中に入れてかばってくれたから……」
「そうか。ベビィ……すまない……ボクが彼女を天文台に招いたばかりに………」
ジーノは、拳を地面に置きました。
「彼女? いったい誰だい?」
「『黒き魔女』……そう呼ばれていた。ロゼッタに、そっくりだった……黒いドレスをまとって……でも、その瞳は、悲しみに満ちていた……」
ルーバは名前を聞き、驚きました。
「『黒き魔女』……彼女に会ったんだね」
「ルーバ、キミは知っているのか? 彼女のことを」
「ああ。ほんの少し、だけどね。『黒き魔女』……強力な魔法を操り、宇宙を旅している魔女だよ。その力を使って、たくさんの星を自分のものにしているらしい。目的はわからない。彼女は多くの謎に包まれているんだ」
「彼女は、ロゼッタをさらっていった。なんとしても助け出さなければ……」
ルーバは腕を組み、眉をひそめました。
「しかし、彼女がどこにいるのかは誰も知らない。彼女はいつも、どこからともなくあらわれ、消えてゆく。手がかりでもなければ、どうしようもないよ。う~ん……」
「手がかり……そうだ」
ジーノはマントの裏側から、ロゼッタのイヤリングを取り出しました。
「(彼女の居場所を、教えてくれ!)」
ジーノが念じると、イヤリングは一本の光の線を放ちました。
「この光の先に、ロゼッタがいる……必ず」
ルーバは、光の差す方向を見つめ、言いました。
「この先はたしか、『暗闇のどうくつ』と呼ばれるブラックホールがある。すべてを吸い込む、暗黒の世界だ」
ジーノは、ベビィに支えられながら、立ち上がりました。
「どうしても行くのかい? 彼女は恐ろしい力を持っている。もし行けばどうなるか……」
「わかってる。だけど、ボクは行かなくてはならないんだ。ボクの……『大切なヒト』を、失いたくない!」
「覚悟はできてるみたいだね。よし、ここはアタシがひと肌脱ごうじゃないか」
ルーバは自分のお腹をポンッと叩きました。
「ルーバ?」
「ふつうの船じゃ、たどり着く前にバラバラになってしまうだろうけど、この星船には、たくさんのパワースターとグランドスターの力がある。きっと行くことができるはずだ」
「……すまない。ありがとう」
「じゃあ、早速行こうかね! みんな、準備はいいかい!?」
「おー!」「いくぞ!」「こわいよぉ……」「しっかりしなさい!!」
「出発! ヨーソロー!!」
エンジンから大きな音とけむりを出しながら、星船は光が指し示す方角へ出発しました。
「ロゼッタ……無事でいてくれ!」
星船は、行きます。
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