ある日、天文台にチコがやってきました。チコは、フラフラと宙を舞ったあと、その場に倒れました。
ガレージでカラダのメンテナンスをしていたジーノは、いち早くチコに気づきました。
「ロゼッタ、来てくれ! チコが!」
ジーノはチコに手を差し伸べました。
「う……ん………」
「大丈夫かい?」
「お願い……親分を助けて!」
「親分?」
「ボクたち、この先の星でひと休みしていたんだ。そしたら突然ヘンな奴らが襲ってきて……仲間をみんな捕まえちゃったんだ。親分はボクをかばって……うう…………」
「ボクたちに任せてくれたまえ!」
「ありがとう……ボク、なんだか疲れちゃっ、た……」
ロゼッタたちがやってきました。彼女はチコを抱っこすると、バトラーに言いました。
「バトラー、この子にベッドを用意してあげてください。それと、温かい食事の支度を」
「はい、ただちに」
バトラーは急いで準備に取り掛かります。
ロゼッタは、目の前の、赤く光る星を見つめました。
「あの星から、邪な気配を感じます」
彼女が見つめる星を見定め、ジーノは言いました。
「キミたちはここで待っていてくれ。ボクが行く」
「わかりました。では、このスターリングをお使いください。あの星へ飛び立つことができます」
杖をスッと振ると、星の形をしたわっかがあらわれました。
「それじゃ、その子を頼むよ」
ジーノが早速リングに入ろうとすると、ロゼッタは言いました。
「ジーノ、お願いがあります。あなたにこの子を連れて行ってほしいのです」
ロゼッタの後ろからひょこっと、白いチコが姿を現しました。
「よろしくね!」
そのチコは、赤い帽子をかぶっていました。
「ロゼッタ、あの星は危険だ。それに奴らの狙いはおそらくチコ……キミの子を連れていくわけにはいかないよ」
ことわるジーノに、彼女は言いました。
「この子は、あなたの助けになりたいそうです。危険は承知しております。けれど、チコが立派な星として生まれ変わるためには、多くの経験を積まなければなりません。特に、誰かの助けになるという経験……それが、チコたちには必要なのです。それにふたりで力を合わせれば、きっと困難も乗り越えることができるでしょう。ですから、この子のことをよろしくお願いします」
「……わかった。ありがとう。よろしくね、ええと……」
名前を聞こうとすると、まわりのチコたちが言いました。
「『チコ様』。どうかお気を付けて!」「『チコ様』、いってらっしゃい。気を付けてね」
「『チコ様』? 変わった名前だね」
「ジーノに言われたくないよ!」
「えっ?」
たしかに、と周りのチコ達は大笑い。
「『ベビィ』……あなたはまだカラダが小さいわ。無茶はだめよ」
「うん、わかったよママ」
「それじゃ、そろそろ行こう」
ふたりはリングの中心にカラダを潜らせました。
「必ず帰ってくるよ。みんなといっしょにね」
「星くずの加護がありますよう。いってらっしゃいませ」
「サァ、出発だ!」
リングの中で思い切りジャンプすると、ふたりは瞬く間に目の前の星へと飛んでいきました。
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