第11章 -にいさん-


 岩がただ、ひしめくばかりの荒廃した大地。
 そこで、ひとりのチコがピョンピョンはねる魔物たちに襲われていました。
「もう逃げ場はないぞ!」「観念しな!」
 魔物たちは、武器を持っていました。
「だ、誰かたすけて!」
 道をふさがれ、文字通り袋の『星』となったチコ。そこへ……
「ちょっと待ちな!」
 ヒュ~~~……ストン!
 天空から、さっそうとジーノがあらわれました。
「誰だ!?」
「ヘイ、キミたち、すまないけれど、そのコは返してもらうよ」
「身の程知らずめ!」「やっちまえ!」
「くるよ!」
 ジーノは腕を銃に変形させました。
「ジーノビーム!」
 ビームは命中し、魔物たちを吹き飛ばしました。しかし、後ろの茂みから新たな影が。
「まだいたのか!?」
 そのとき、ベビィがすかさずスピンアタック! 魔物をひるませます。
「今だよ!」
「! くらいな!」
 ズドン! 大きな音とともに、魔物はいなくなりました。
「ありがとう、助かったよ」
 ベビィは誇らしげです。
「それにしても、こいつらは一体……」
 辺りを見渡し、震えているチコを見つけました。
「無事かい?」
「ありが……!?」
 ジーノの顔を見た瞬間、チコは飛び上がりました。
「誰か助けて!」
「え、ちょ、ちょっと待ってくれ! ボクたちはキミたちを助けに来たんだ」
 チコは聞く耳をもちません。
「ボクたちは仲間だ!」
 ベビィが追いかけ、逃げるチコに言いました。
「え……キミも、チコ?」
「もちろん!」
 チコは安心し、ジーノのもとに近寄りました。ふたりはチコに事情を説明しました。
「そっか……来てくれてありがとう」
「そういえばさっき、ボクを見て驚いていたようだけど、それはどうしてだい?」
「……奴らの中に、あなたにそっくりなヒトがいたんだ。だから、びっくりしてつい……」
「ボクに似た……?」
 どういうことなのか、ジーノは考えられずにはいられませんでした。しかし、今はチコたちを救うことが先です。
「チコ、仲間がどこにいるか、わかるかい?」
「この先の崖の下に、奴らがいる。こっちだよ」
 ふたりはチコについていきます。
 崖の下では、たくさんのチコがオリに閉じ込められていました。その中にひとりだけ、縄でがんじがらめにされたチコがいました。チコというにはあまりにも大きく、どうやらオリに入らなかったようです。
「あんたたち、その子たちをどうするつもりだい!」
 紫色の、ひときわ大きなチコが、声を荒げて言いました。
「そんなことを聞いてどうする? お前たちはもう捕らわれの身。何もできはしない」
「隊長殿、輸送準備完了しました。いつでも運べます」
「ご苦労。よし、運べ」
「大量の星の子を手に入れることができましたね!」
「これで褒めてもらえますね!」
 魔物たちは、持っている武器を高らかに掲げ、喜びました。チコに案内してもらったふたりは、その様子をこっそり見ていました。
「あれが、あいつらのリーダーか」
 遠くでよくは見えませんが、赤いマントと帽子を身に着けているようです。
「ボクが正面から行って、注意をひきつける。その隙に、みんなを助けだしてくれ」
「わかった」「気を付けてね」
 またあとで、と互いに言葉を交わした後、さんにんは各々の役目を果たしに行きます。
「何者だ!」
 ジーノは崖から飛び降り、彼らに言いました。
「ボクはジーノ。星を追う者。チコはボクたちの大事な家族だ。返してもらうよ」
「……まさかこんなところで会えるとはね」
 隊長、と呼ばれていた者がマントを翻し、こちらに振り向きました。
 ジーノは動揺しました。なぜなら……


「ボクと……同じ姿……!?」
「はじめまして。もうひとりのボク。いや、『兄さん』」
 含み笑いをうかべ、彼はジーノのことを『兄さん』……と呼びました。


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